いろいろなケミカルピーリング

 ケミカルピーリングは目的によって使う薬剤も変わります。日本人でよく使用されるのが、AHAとBHAです。それではその種類と特徴について見ていきましょう。
AHA(アルファヒドロキシ酸)
 リンゴやぶどう、柑橘類などのフルーツによく含まれていることから別名フルーツ酸と呼ばれるものです。グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などがあります。肌になじみやすく刺激も少ないため、日本では最もメジャーなケミカルピーリングの薬剤といえます。
 角質層のつながりをゆるめる効果があり、古い角質をはがれやすくします。主に浅層部分に使われ、これを数パーセントの割合で配合した石鹸やジェルローションなどもあります。
 角質をはがして正常なターンオーバーを促しながら治療する経過をとるので、ニキビの治療の場合では何度か行う必要があります。肌の深部に到達することもあるので中和させながら使う必要があります。

【グリコール酸】

 さとうきびや人間の体に微量ながら存在する天然成分です。AHA(アルファヒドロキシ酸)のひとつで、ピーリングでは通常30%程度の濃度で使われます。
 浸透しやすく刺激が少ないのが特徴で、角質のつながりをやわらかくして古い角質をはがれやすくします。ニキビ治療やシミ、くすみの改善に使われる一般的な酸ですが他の薬剤に比べて表皮を溶かしていくものではないため、その効果はどちらかというと穏やかです。
 サリチル酸が脂溶性であるのに対し、グリコール酸は水溶性になります。ニキビの治療では角質のつまり(角栓など)でうまく排出されなかった皮脂や雑菌を排出させるのが目的となります。よく『ニキビの皮脂や角栓を溶かす』と考えられますが、グリコール酸の場合、古い角質をはがしてターンオーバーを早めることで治療するという考え方になるでしょう。
BHA(ベータヒドロキシ酸)
 皮脂に近い性質をもつサリチル酸のことで、脂性トラブルの代表でもあるニキビ治療などに使われます。欧米では一般的に使用されていますが、日本ではAHAに比べて効果は高いもののリスクもあるとして、余り使われていませんでした。            
 ここ最近ではサリチル酸マクロゴールという成分が開発され、ピーリングに使われるようになっています。この薬剤の登場によって効果が高くリスクも低いとしてBHAの人気が高まっています。

【サリチル酸エタノール】

 もともとサリチル酸は強酸で、医薬品では解熱や痛み止めに使われてきた薬品です。   その歴史は古く、3%?5%の濃度で皮膚科治療によく使われていました。欧米ではケミカルピーリングの処方に使われてきましたが、痛みや炎症のほか、めまいや頭痛、耳鳴りなどの症状が出ることで『サリチル酸中毒』と呼ばれました。
 強い酸は皮膚への影響も強いので、ピーリングの効果も期待出来ますがピールが深くなりやすく、副作用も無視出来ません。中和を行い、ピーリング前後にも適正な処置をしなければならずその手順は複雑でした。

 中でも強酸であるサリチル酸はピーリング効果が実証されていながらも、日本人の肌質に合わないこと(その刺激や炎症、回復期の長さ)が欠点となり医療機関でも消極的な薬剤として位置づけられていました。
 その後、エタノールに混ぜることでサリチル酸中毒の危険性はなくなったと言われていますが、日本人(アジア人)の肌にはまだ刺激が強いとされています。
 角質を溶かすタイプのピーリング方法になり、アルコール特有のピリピリとした痛みや炎症が起こることも多く、グリコール酸よりも効果が強い反面、回復期を長く必要とします。

【サリチル酸マクロゴール】

 サリチル酸は、これまでエタノールに溶かして使っていましたが、それをマクロゴールという基材に変えて安全性を高めたものがサリチル酸マクロゴールです。
 ところが、マクロゴールと合わせることでそのリスクと手順が軽減されることがわかり、現在では効果的なケミカルピーリングの薬剤として主流になりつつあります。
 確実に角質層でのみ浸透が留まるので使いやすく、血液に吸収されることがないため副作用も少なく安全だと言われています。

 ニキビの菌や皮脂、角栓を溶かしてしまうのでニキビ治療に役立ち、再発しにくい状態を作り出します。コラーゲンを増加させる効果があり、キメや弾力を実感させると共にニキビ痕や毛穴の改善にも役立ちます。
 痛みや赤みが出ないことと、回復が早いことが特徴ですが角質層をすっかり溶かしてしまうのでバリア機能がほぼゼロの状態になってしまいます。肌の再生機能も高まるため、数日後には新しくキメの整った角質層が厚さを増していきますが、完全に仕上がるまでは十分な保湿と紫外線予防が必要になります。
TCA(トリクロールまたはトリクロロ酢酸)
 肌の一番深い部分、真皮に到達する薬剤です。濃度によりピーリングの深さを調整して陥没性のニキビ痕や深いシワの治療に効果を発揮します。真皮に到達して刺激を与えることでコラーゲンの生成を活発にすると考えられています。TCAの一部で最も一般的なのはブルーピールと呼ばれるものです。アメリカの女性医師オバジがTCAでの安定治療のために発案した薬剤で15%程度の濃度で使用します。ピールの深さがわかりやすいように青い色素が入っているのが特徴です。日本においてはフェノール同様、TCAの使用には消極的な医療機関がほとんどです。
ジェスナー液
 サリチル酸、乳酸、レゾルシノール混合液です。浅いピーリングに使用しますが最初はピリピリとした痛みを感じます。人によっては激しく痛む場合もあるようですが、揮発性のため時間が経つとその痛みも治まってきます。ピーリングに使う薬剤の中では効果や安全性で穏やかな方とされています。
レチノイン酸(トレチノイン)
 ビタミンA誘導体で、人間の血液中に微量ながら存在する成分です。そのためアレルギー反応が起こりにくく使いやすいとされています。
フェノール
 フェノール酸はディープピーリングに用いられ、真皮に働きかけます。陥没性のニキビ痕や深いシワに効果を発揮しますが、激しい痛みやかさぶたなどが出来るため皮膚科でもやけどなどの治療以外にはあまり使われることはありません。
 ベーカーゴードン液と呼ばれるものは、濃度が48%のフェノール酸のことです。1960年代に形成外科医であるベーカーとゴードン医師が写真でその施術経過を報告したことから一般的となりました。
■注意しましょう!!
 インターネットでは色々な薬剤が入手出来るようになっています。日本のみならず欧米、アジアの各国から手に入れることが出来ますが、その安全性は不確かなものばかりです。
 ケミカルピーリングで使う薬剤は『酸』で、化粧品などではありません。その使用方法は決して安易なものではなく十分な注意が必要になります。

 「数値が低いから」「口コミでいいと言ってたから」という理由で使用すると、色素沈着、時には不可逆性の瘢痕を残すなど取り返しのつかない肌トラブルを抱えることもあるのでやめた方が無難です。
 たとえばサリチル酸マクロゴールは混ざりにくい薬剤を特殊な方法で混ぜ合わせたものです。「副作用もなく効果が高い」と言われるのは専門の医師が一人一人の肌質を見て、正しく薬剤を使った時にだけ言えることです。

 エステサロンでも多く行われていますが効果の程度がわかりにくかったり、前後のケアが悪いために別なトラブルを抱える事態も報告されています。したがって厚生省の通達ではケミカルピーリングは医療機関でのみ行うべきとされています。肌の個性を誰が見ても同じなど、そう単純なものと考えずに皮膚のエキスパートに相談して正しいケミカルピーリングを実施しましょう。
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